アレクサ vs シリ ボイスコンピューティングの未来

Amazonアレクサとそれを追うGoogleアシスタント、これが２強。Appleシリ、Microsoftコルタナを加えて４強（フェイスブックは個人情報流出事件で自粛中のため番外）。著者はまず「音声」を機械が正確に聞き取ること（発すること）が結構難しいと指摘する。音声でやりとりできるようになったことで、格段に便利になった。次にディープラーニング。ネコの写真といった画像認識から、言語の理解へと進んでいる。音声で言語が理解できるようになれば、次に問題になるのが、「AIにどんな人格をもたせるか」。ＡＩは人との交流を積み重ねて機械学習するので、人間がおしゃべりしたくなるようなAIほど成長が早くなる。愛着が持たれるAIならば、信頼性も高まり、個人情報悪用の懸念も減るので、いろいろおしゃべりしてくれると期待できるという。AIの人格は各社各様で、アレクサは愛想が良く、シリはちょっと生意気、Googleアシスタントはクールな秘書のイメージに設定されているらしい。ただし、言語を理解できるようになってきたとはいっても、字面通り解釈しているだけで、内容まで理解していない。ユーザーの発言に適合する情報をクラウドから検索して読み上げているレベルなので、会話がかみ合わないことがままある。人間的な常識をどうAIに身につけさせるかが今後の課題だという。便利になった反面、懸念される点もある。「ハローバービー」は幼児のおしゃべり相手のおもちゃだが、クラウドにつながっている。過去の会話まで記憶して自然な会話ができるようになっているらしい。子どもたちからの想定外の質問に適切に答えられるか、また、虐待の気配がある時に、聴かぬふりをしていいのか。とはいえ、警察に通報していたら「日常生活への監視」になりかねない。これは、おもちゃに限った話ではなく、アレクサなどでも同様の懸念を生む。 また、音声で検索・回答するとなると、多数の選択肢を長々と説明するのではなく、正解を１つに絞る必要が出てくる。SEOで順位を上げるどころではなく、１位になる必要がある。（こういう背景もあって、デジタル・プラットフォーマーの取引慣行が公平かどうかについて、世界の独禁当局の関心が高まっているのだろう）。 最後の、「著者が自分の父親のボットを作った」はスゴイ。ただ、著者は、父親本人や親族に受け入れられるかどうか、配慮しながらやったようだから、健全なスタンスだと思う。戦争の記憶や災害体験を語り継ぐにもいいかもしれない。当事者にも関与してもらう条件付きで。