Uberland ウーバーランド ―アルゴリズムはいかに働き方を変えているか―

配車アプリを東南アジアで経験した時、事前に料金が確定するし、車の接近状況を見ながらレストランを出ればいいので、実に便利で素晴らしいイノベーションだと感じた。しかし、本書では、「ドライバーの働き方」という面で課題もあることが語られる。Uberの枠組み（ウーバーランド）においては、ドライバーは個人事業者であり、乗客とマッチングしてもらうためにUberのアプリを利用する消費者である。したがって、Uberとの間に雇用関係はない。「好きな時に働けばいい」はギグ・エコノミーの特徴で、雇用関係にないという点に特に違和感はなかったが、『アルゴリズムに指令される働き方は、今までの働き方とはだいぶ違う』という本書の主張にも一理ある。著者は、ドライバーからのインタビューを重ね、課題を詳細に述べる（似たような話が繰り返されるので、読むのに少々疲れた）。空いた時間に小遣い稼ぎしたい、乗客との会話を楽しみたい、アプリから提示されるプロモーションをゲーム感覚で楽しめる、といったタイプのドライバーにとっては、Uberは快適なようだ。しかし、ドライバー収入で生計を立てようとなると、かなり厳しい状況もあるという。それは、新しい都市への進出当初は、ドライバー確保のためにレートを高く設定するのでドライバーは儲かるが、高いレートは、長くは続かないからだ。さらに、Lyftなどライバルとの競争の結果、運賃が下がり、ドライバーの収入は下がる。これ自体は当然の理屈にも思えるが、アルゴリズムには全ての情報が見えているのに対し、ドライバーからは乗客の支払額、Uberの取り分が見えない。また、ドライバーが配車要請に応じないことが度重なると、アルゴリズムは、まるで上司のようにドライバーにペナルティ（アカウント停止など）を課す、などなど。ところで、日本の法律では、白タクが禁止されており、例外的に、公共交通の空白地域に限り、地域住民等による有償運送が道路運送法の特例として認められている程度だし、政府内の議論を見ても、すぐにUberが入ってきそうな雰囲気はない(日本の配車アプリは、タクシーを配車する）。ただ、タクシーでカバーできていない地域も多く、いずれ例外措置は拡大することになりそう。その際、タクシー業界との利害調整だけでなく、ドライバーの働き方について考えておくべき課題はありそうだと思った。せめてドライバー対応は、アルゴリズム任せではなく、人間がやるとか･････